年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
 私には普通に家庭を持って、幸せになるという夢がある。そりゃあ、貴族に生まれてしまった以上、自由な恋愛は出来ない。そこは嫌というほどに理解していたし、付き合うのなら同じような身分を持つ人だと考えていた。

 だから、ノーマンに告白されたときはとっても嬉しかった。よく覚えている。

 ……幸せって、長くは続かないものなのね。理解してしまったわ。

「……今日、どうしよう」

 一日休みを取っていたので、この後は暇。職場の人たちには「今日は恋人とデートなんだ」と言ってあるから、すぐに帰ることはできそうにない。……虚しい。

「せっかくだし、一人で飲もうかな」

 真昼間から飲むなんて、今までの私だと考えられないことだ。

 けど、失恋した日くらいはいいじゃない! この際やけ酒よ! やけ酒!

 とまで思って、私は気が付いた。

(今日、そんなにお金持ってきてなかった……!)

 ……こうなったら、仕方ない。

 少しぶらぶらと散歩をするくらいにしよう。あと、近場のお店でランチを食べよう。

 うん、そうしよう。ランチ代くらいはお財布の中にも入っているし。

(あーあ、私ってなんなんだろうなぁ)

 仕事は上手くいっているし、家族関係も職場関係も良好。

 上手くいっていないことといえば、恋愛関係くらいなんだろう。

 人はそれを贅沢と言うのかもしれない。だけど、誰だって夢くらい見るでしょ? 完全無欠の、幸せな日々。

「本当に今日は厄日だわ」

 この出来事は私のせいであって、ノーマンのせい。

 ここまで関係が冷めきっているのに気付けなかった私のせいで、前触れもなく別れを告げたノーマンのせい。

 どっちもどっちってことなんだろうな。はぁ、なんとも言えないわよ、もう。
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