年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
第2話 空腹の男性
 私は街の中央へと足を進めた。

 先ほどまでいたのは街の外れで、人通りもまばらだった。そのおかげで、野次馬とかはできなかったけど。

(――ノーマンのバカ)

 彼のために必死に働いてきたのに、それを無下にするなんて!

 と思ったけど、これは私の自分勝手な行動だったのかもしれない。

 彼のために頑張ろうと思っていた。もしかしたら、これは彼にとってありがた迷惑で、プレッシャーになっていたのかもしれない。

 その可能性に今更気が付いて、私は時間が戻るように願った。無理なのはわかってるわよ。

(しばらく恋人とかいいわ)

 失恋の傷は新しい恋で癒せ。

 私の友人なら、こう力説してくるだろう。でも、あいにくそんな前向きに生きることができない。

 自分ではポジティブなほうだと思ってたのに、どうやら私は違うらしい。……虚しい。

(本当に時間が戻ったらいいのに)

 何度も無理なお願いを繰り返して、前を向いた。

 すると、目の前から一人の男性が歩いてくるのが見えた。

 普通の男性だったら、気に留めることはなかっただろう。ただ、彼のことは無意識に気に留めていた。

(なんだか、ふらふらとしているような……?)

 もしかして、体調でも悪いのかな――?

 見たところ身なりは悪くないし、お金に困っている風でもない。

 でも、顔色は悪いし、ふらふらとおぼつかない足取りで歩いている。

 飲みすぎとかそういうことならいいけど、そんな感じでもない。

 男性が私の隣を通り抜けた。――お酒の匂いはしない。

「――あのっ!」

 もしも、私が声をかけなかったせいでこの男性が倒れてしまったら――と思ったら、声をかけていた。
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