年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
「俺……その」
「……はい」
「なにか、食べるものが……」

 一体彼は今、なんと言ったのだろうか?

 私はきょとんとしてしまった。

(聞き間違いじゃなかったら、食べるものをって……)

 まさか、空腹で倒れていたっていうこと!?

 いや、少なくとも身なりはきれいだし、普通に働いている風に見えるんだけど?

「く、空腹で倒れたのですか……?」

 恐る恐る、確認した。男性は首を縦に振る。……よし。

「少し待っていてください。なにか、食べるものを買ってきますから!」

 財布の中にはお金が少しは入っている。あまり豪勢なものは買えないけど、パンとかだったら買える。

 私は地面を蹴って走った。

(あぁ、本当に今日は厄日だわ!)

 ノーマンにはフラれるし、空腹で行き倒れた男性を見つけてしまうし……!

 ううん、後者は厄とは言い切れないわ。

 少なくとも、彼は私がそばを通りかかったことで、助かっているのだから。

 なんて思いつつ、私は近くにあるパン屋の扉をたたいた。
< 6 / 12 >

この作品をシェア

pagetop