年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
第3話 アシュリー・エインズワース
「ふわぁ、生き返った……!」

 しばらくして、私はかの男性と共に公園のベンチに腰かけていた。

 彼は私が買ってきたお水を飲みつつ、サンドイッチを頬張っている。四つ買ってきたサンドイッチのうち、三つはすでに彼のお腹の中だ。

(この人、なんなんだろ……)

 最後の一つとなったサンドイッチを頬張りつつ、彼が私に視線を向ける。胸がどくんと大きく音を鳴らしたような気がした。

「すみません。実は三日ほどなにも食べていなくて……」

 男性が申し訳なさそうな表情で言った。

「そうなのですか」

 端的に返事をして、私は自分の分のお水を口に運んだ。

 ひんやりとした冷たさに心が落ち着いていく。

 でも、心が落ち着くとノーマンにフラれたという現実が胸の中に浮かび上がってきて。

 自然とコップを握る手に力がこもる。

「……あなたは、優しいですね」
「え?」

 不意に男性がつぶやいた。だから私は彼の顔をじっと見つめる。

 彼はふわっという効果音が似合いそうな表情で笑っていた。

「こんな見知らぬ男のために、駆けまわってくれるんですから」

 目を細めた彼が優しい声で言う。……別にそういうわけじゃない。

「別に、優しいわけじゃないです」

 視線を落とすと、口から言葉が零れた。

 だって、そうだもの。私は多分、彼を利用しているんだ。

「なにかしていないと、いろいろと辛くなっちゃって……」

 ほかのことを考えていたほうが、ノーマンのことを考えなくて済むから。

 ……なんて、彼には関係ないのに。自然と苦笑が浮かんだ。
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