僕の10月14日

 次の日、僕はもちろんその場所に行った。ベンチに行く前にコンビニに行って、チョコと飲み物を数種類買った。

「こんにちは。」

「こんにちは華菜さん。さっき、コンビニに行ってチョコと飲み物買ってきたの。飲み物や食べ物は大丈夫?飲み物は何種類かあるかよ。」

「ありがとう。えーっと・・・お茶がいいかな。チョコは大好き。」

「良かった。はいどうぞ。」

「うれしい。久しぶりチョコ。」

「買い物はしないの?」

「本当はね、勝手に食べちゃいけないの。」

「えっ、ダメじゃん。」

「フフフ、大丈夫。大げさなのよ、病院で何かあったら困るからって。」

「聞いていいかな・・・何の病気なの?」

「心臓・・・でもね、夏の終わりにはきっと退院できるはず。」

「そっか・・・退院楽しみだね。・・・ねぇ、退院したらまず何したいの?」

「何だろう・・・」

「明日までに考えておいてよ。」

「うん。それって楽しいね。考えてみる。」

「ああ、答え聞かせて。楽しみにしているよ。」

「うん。・・・あの・・・私も質問していい? 亨さんは、どうして怪我しちゃったの?」

「聞きたい?」

「うん、聞きたい。」

「僕ね、バイクに乗るんだけど、アルバイトに行くときに公園横を走っていたらサッカーボールと小さな男の子が木の陰から飛び出してきたからハンドル切って避けたのね。そうしたらそこに大きな蛙がいたから慌ててもう一度ハンドル切ったら見事に転倒したわけ。」

「ククククク、ごめんなさい笑ってしまって。何だかマンガみたいだなって思って。」

「ホントだよね。それを警察に話しても信じてもらえなくて、まるで僕がスビート出していたからよけられなかったんじゃないかと疑われて、まいったよ。まあ、道の縁石壊しちゃったからね・・・」

「あら・・・どうやって疑いを晴らしたの?」

「丁度そこの場所に防犯カメラが付いていたの。一部始終が映ってて、蛙も映っていたって。」

「よかったですね。でも怪我したのは良くないか・・・」

「まあ、不幸中の幸いってこういう事言うんだよね。」

「亨さんって優しいんですね。蛙まで助けようとするなんて・・・」

「そうだよね。蛙をよけなきゃこんな怪我しなかった。男の子のご両親にお見舞もらっちゃったけど、本当は蛙にもらわなきゃいけなかったね。」

「フフフ、本当! 蛙にもらわなきゃ。フフフ、亨さん面白い。」

「今日はいっぱい笑ってくれたね。君の笑顔、素敵だよ。」

「亨さんって、そういうことサラッと言えちゃう人なんですね。」

「僕? 普段は女の子とろくすっぼ話も出来ないんだけど・・・」

「私は女の子じゃないってこと?」

「うーん、そうなのかな? 君は本当は男の子?」

「ひどーい。亨さんひどーい。」

「ハハハ、うそうそ。そういうふくれた顔も可愛いよ。」

― 僕本当にどうしちゃったんだろう、こんなこと普段は言えないのに・・・

「あっ、もうこんな時間・・・亨さん・・・私こんなに楽しかったのって何年ぶりだろう。また明日、私を笑わせてね。」

「ああ、また明日。ちゃんと退院した後何がしたいか考えて来るんだよ。」

「考える。・・・じゃあね。また明日・・・」

華菜ちゃんは少しルンルンしているようだ、昨日より髪の毛や服が大きく揺れていた。

― 可愛すぎるだろ・・・華菜ちゃんの前だと僕はいつもの僕じゃなくなる。何だか夢の中のようだ・・・
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