あたしの愛を受け取りやがれ!〜ひなのと彼女の物語〜

彼女とは、こうやって出会ったんだぜ?

この物語の主人公の名前は西城ひなの。
年齢は……。言わないでおく。とりあえず30代。特別美人だったり、何かの才能があるわけじゃあないけど、まあ、そんな女の話に少しだけ耳を傾けてくださいよ。
楽しいかは知らんけど。笑 
あ、わたし、服部がたまに出てくるので、よろしくね♡

そう、これはひなのがある女性に出会ったときの話。
よく聞いときなよ? 
楽しいかもしれないから……。

それは昔昔、ひなのがまだ学生だった頃。
その頃は本当に退屈で退屈で仕方なかったの。
だから、どうにかして、何かないもんかと日々考えていた。

そんな時に発見したのが、生配信アプリ。
配信者が何かおしゃべりして、それに対して、聞いている人(リスナー)がコメントするってやつね。

そのころはまだ主流じゃなかったけど、なんだかひなのはすごくワクワクして、惹かれたので、始めてみた。

最初は本当に興味本位で。
一体どんな人が、どんな配信をしているのだろう?そんな感じだった。

そしたらね。それぞれがいろんな配信をしていた。
例えば、雑談だけの配信。歌を歌いながらの配信。
あとは、何か作業をしながらおしゃべりする配信。
こんな感じでいろいろあったわけよ。

そんで、それぞれ気に入った配信者のところに、リスナーとして聞きに行く感じ。

そんときのひなのは心の中で
「え~~~!めっちゃ楽しそうやんけ!!
おっしゃ!いろんな人んとこ行ってみよ~~~~♡」
って、そんな風に思った。
それまで暇すぎたからさ、こんな楽しそうなアプリ見つけちゃってラッキー♪てな感じで、ワクワクしちゃってたわけよ。

彼女、中屋敷柚果と出会ったのは、ひなのの誤タップからだった。
つまり、間違ってボタン押しちゃって、彼女の配信に入ったってわけ……。
そしたらさ、その彼女はすごく口が悪くてさ。
正直早く、そこを離れたかった。笑
そんでひなのは、どうにかして抜ける方法を考えた。

でも、そのときは参加者がひなのを含めて2人しかいなかったから、抜けるに抜けられなかったんだよね。
だってひなのが抜けたら、もう片方のリスナーしか残らなくなっちゃうじゃん??
それだと寂しいかな?と思ったから、そのままそこにステイしちゃったわけよ、ひなのちゃんは。

「あ~なんて優しい女の子なのわたし~~~!なかなかいいヤツじゃ〜ん!」って、ひなのは頭ん中でそう叫んでた。笑
あ、脱線した!ごめんなさい~~

それでそのあとは、15分くらい彼女の配信にステイしたわけよ。
でもそのあと、ひなのは気づいた。

最初は口悪いだけの人だなって思ってたんだけど,よくよく聞いてると、リスナーに質問を投げかけたり、話しやすい内容を選んだりして、リスナーのことをよく考えてるんだなってね。
ひなのはそこから、彼女のことをもう少し知ってみたくなった。

だからまた是非、彼女の配信に行ってみたいな、と思ったのさ。
そのあと何日かが過ぎて、彼女がまた配信をしていたから、参加してみた。
う~ん、あれは確か、日付が変わるころだったかな。
行ってみたら、なんと!

ひなのと彼女の2人っきりではないかぁ~~~! 
ひなのはそんときも正直、帰りたかった。だってさ、2人っきりってちょっと……。
いや、結構緊張しないか??
でも今回はそれこそ、ひなのしかいなかったから抜けられなかったんだよね……。
だからまぁ、とりあえず、話してみた。前回から少し気になってたから。
もちろんそれは、ただの配信者として、ね。その時は。

しばらく話してたら、また、彼女の好感を持てる部分を見つけた。
そのとき彼女は仕事をしてなくて……。
つまり、ニートね。それだと周りの目が気になるから、ニートではいられない。働かなきゃって思っていたらしかった。
それを聞いてひなのは
「あ〜この人、すごく真面目な人じゃん」って思ったのさ。

だからひなのはその時に、彼女のことをもっと知ってみたい、って思うようになったのさ。

そこからしばらくは配信にも行かず、時間が過ぎていった……。
配信に行きたくても、なぜか踏み込めない自分がいたことに、ひなの自身、気づいていた。
思えばそのときから、ひなのの心の中では彼女に対する何か、が変わっていたみたいだった。

しばらくして、彼女のエックスの投稿を見に行くと、こんな風に書いてあった。
「体調が悪いから、しばらく配信お休みする」ってね。
それを読んだひなのは、彼女にDMで「大丈夫?」って声をかけたかった。
でも彼女はフォロワーからしかDMを受け取らない設定にしていた。だから、それはできなかったの。

そこでひなのはどうにかしてDM以外で声をかけられないかなぁ?って考えた。そして気づいたの。
「おし!!DMがダメなら、コメントで伝えればいいやん!」ってね。

コメントの内容も、ひなのはすごく考えた。なんて書いたら、彼女の心に響くだろうか。
どんな風に書いたら、心を楽にしてあげられるんだろうか。
で、その時に選んだ言葉達。

「配信休んでるみたいだけど、大丈夫?何かあったら、言ってよ。しんどいときは、休んでいいよ」

すご〜くありきたりだとは思う。誰でも、かけることができる言葉達だった。
でも、ひなのは心を込めて作った文章なら、例えありきたりだったとしても、必ず彼女の心に響くだろうと信じていた。

そしたらね、なんと!!!
あちらから、フォローされたではないか〜〜〜〜♡♡

まさか、そんな事をしてくれるとは思いもしなかったから、カナリびっくりしたとともに、なんだかすごく嬉しかったの。
だってそれってさ、閉めてた扉を少し、開いてくれたってことじゃん?

だから、ひなのは舞い上がってしまって、早速心配しているというような内容のDMを送った。
さっきのコメントだけで十分だったんだけどさ。さらに声をかけたかったのよね。
これはそのとき、ひなのが送ったDMね。

「お疲れ様!フォローありがとうね!よろしくね♪大丈夫?心配~~~!!!早く復帰できるといいね、無理しないでね〜」

でもこれを送ったあとに思った。
結構くどかったってね。
でも、送ってしまったもんは、もう戻せないも~~ん!
って思って開き直ったみたいだけどね。笑

そしたらさ、こんな風に返ってきたのさ。
「ちょっと配信萎えしたから、数日休んでるだけだよ」って。
そん時正直、ひなのは少し残念だった。
な~んだ心配ご無用か!!ってね。

でもそのあとさらに
「心配してくれて、ありがとう!それだけでも、嬉しいよ♪」って返ってきたのね。
それを読んだら、ひなのは喜ばずにいられなかった。
だってそれって、少なからず心に響いたってことじゃない?これは舞い上がらないわけないよね?
で、そのあとのひなのの返事はこう。

「柚果はさ、一見元気そうに見えるけど、何か抱えてるものがあるように感じたの。直感でね。(違ってたら、ごめん)
だから、声かけずにいられなかった。少しでも、力になりたいと思ったよ」

ひなのには、人と少し話すだけで、その人がどんな人かが分かる、特技のようなものがあった。
また、結構な気にしぃだった。
あとから
「コイツ、知ったふりしてるって思われたかも!」なんて考えちゃうタイプね。
だから、今回もそう思われたんじゃないかなって、言った後に気にしてしまっていたのさ。

そしてそれは、さらに数日後のこと。
今度はこう。
「配信萎えしてるって言ってたけどさ、本当に無理しなくていいと思うんだよね。
何かしら心の中で思うことがあって、萎えてるのかな?とは思ったけど。
無理しなくていい。
みんなが柚果の配信に来てくれるのは、きっと配信者である柚果が、素敵な人だからなんだと思った。
だからさ、無理しないで。
やりたいときにやればいいさ。
みんな、分かってくれるよ。
大丈夫、ゆっくりいこう。読んでくれてありがとう。返信はいらないよ。何回もごめんね」

そしたらまた
「ありがとう」と返事が返ってきた。ひなのは素直に喜んだ。

そしてしばらく経った時に、彼女がニートを卒業して、仕事を始めることになった。
ひなのはそこでまた、DMを送った。

「仕事、がんばってね!大丈夫、柚果ならきっとうまくいくから。通勤気をつけて~!」
柚果はその返事として、初日はなんとか乗り切った、と送り返してくれた。

「う〜!返事がこなかったらどうしよう〜悲しくなりそう。泣」
と、心配はしていたが、思いがけず返事が来て、ひなのは驚いたと同時に、めちゃくちゃテンションが上がった。
心の中ではトランポリンで高く高く飛び跳ねていた。あ、落っこちてないから、大丈夫よ♡ 笑

みなさんも、こんなことってないですか??
「こうかも!どうしよう〜!!」って心配してたけど、意外と大丈夫だったってやつ。服部はあります!

こんな風にその後もしばらくの間、細々とやりとりを続けていた。
返事が来ないとしんどく、来たら飛び上がって、の繰り返しで。
これはもちろん、ひなのが彼女に対して、抱き始めた感情が、どんなものだったか、読んでくださっているみなさんには想像できていると思う。

しかし、問題はここから先だった。
ひなのは完全に舞い上がっていたことを、後から知ることになる。
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