社長は私が好きらしい





「恋人にならないとキスするけど?」


夜の社長室に呼ばれた私は、神山社長にそう言い寄られた。私たちは付き合ってこそいないが、何回もデートを重ねている。それもそろそろ一年経ってしまう頃だった。私が臆病で、勇気が無くて、ただ彼に答えられていないだけ。優しくて穏和な社長が、遂に痺れを切らしてしまったのだ。


私を部屋の隅まで追い込んだ社長は、熱い眼差しをしていた。整った顔立ちは綺麗で、今でもたまに息を飲むほどである。


アラサーの一般社員の私が、社長と親交があるのはお見合いの席でお会いしてしまったから。陶芸家の祖父との繋がりで、神山社長のお爺さまが一度会わせようという事になって……。それからずっと、デートだけしている関係だった。でも、もうそれもお終いらしい。神山社長は我慢に我慢を重ねていたのだ。


私は、ゆっくりと目を閉じた。そうして、彼の唇が触れたのだった。



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