妹に婚約者を取られ貧乏魔導士との結婚を押し付けられました〜そこから始まる姉の領地改革〜

12 Sランク魔導士

怒り狂うゼルゼディス様を、魔導士達が死ぬ前に何とか止めた。

「ゼルゼディス様、落ち着いて…
私は大丈夫ですわ!」

「でも、あなたの顔に傷をつけるなど…」

「ポーションを買いに行きましょう。
すぐに治りますわ。」

私は言う。

「ならば、私の魔法で…
水の精霊ウェンディーネよ、我が問いに応え、エシャロットの傷を癒したまえ。」

微かな痛みと傷が消えていく。

「ありがとう、ゼルゼディス様。」

まぁ、そして、邪魔者も居なくなったので(ほとんどが気絶している)、ウェディングドレス店マドンナに向かった。

「お客様、いらっしゃいませ。」

黒髪をまとめた女の人が挨拶する。

「こ、こ、こんにちは!
あの、ウェディングドレスを買いたいんです!」

ゼルゼディス様が緊張した面持ちで言った。

「え、えぇ、色々とご用意しておりますわ。
ご予算はいかほどでしょうか?」

女性は少し気圧されながら言う。

「3万ルナなんですけど…」

ゼルゼディス様が自信なさげに予算を言った。

「うーん、その予算ですと、このコーナーですわね。」

女性は隅の1箇所を指し示した。

私はドレスを見てみる。
うーん、正直あまり良さげなのは無さそうだ。

「すいません、エシャロット。
私に甲斐性が無いせいで…」

「あら、私が着ればどんなドレスでも似合うと思いませんの?」

私は謝るゼルゼディス様に少しおちゃらけて言った。

「それはもちろん、そうですが…
ありがとう、エシャロット…
本当にあなたで良かった…」

私はシンプルなマーメイド型のドレスを選んだ。

いっそ、安いならシンプルな方が良いはずだ。

2万9000ルナ支払って、私たちは馬車で辺境の領地に帰った。

しかし…
私は馬車の中でずっと考えていた。

ゼルゼディス様の使った魔法は、イフリート召喚…
魔導士が叫んでいたように、Sランクの魔導士にしか召喚出来ないと聞いている。

それに、木竜の時だって…

私は勇気を出してゼルゼディス様に聞いてみる事にした。

「ゼルゼディス様は本当に魔導士として下っ端なのですか?」

「えぇ、もう5年ほど経ちますが、ずっと下っ端でしたよ。」

ゼルゼディス様は答えるが…
さすがに苦しいと思ったのか、静かに口を開いた。

「…というのは仮の姿で、本当はSランク魔導士だとしたら、あなたはどうしますか…?」

「どうって…
それは驚きますけど…
それ以上に何が…?」

「婚約破棄とかしませんよね…?」

「しませんよ。
むしろ、その、か、か、かっこいいと思いますわ。」

私は言った。
何となく顔が赤くなってしまう。

「Sランク魔導士なんです!!!」

ゼルゼディス様は急に堂々とそう言った。
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