初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「晶人さん、ごめんなさい。…私には好きな人がいます」
そう答えた数秒後、ハーッと息を吐きながら顔を上げた晶人さんは苦笑した。
「そっか。まぁそうだよな、俺と許嫁なのも嫌がってたもんな」
「それは晶人さんもそうでしたよね。ゆきえさんて彼女もいたみたいですし」
少し嫌味も含めてそう言ったのだが、返ってきた言葉に驚きを隠せなかった。
「…俺は麻里亜の事が好きだったよ。麻里亜が大学生になって、初めて会った時に一目惚れしてからずっと」
「…え…?」
晶人さんは苦笑したまま話し始めた。
「ゆきえは腹違いの妹なんだ。…俺が年下の麻里亜に対して素直になれないのを見て、麻里亜に気にかけさせるために見せかけだけの彼女役をしてくれてたんだ。もちろん京都は一人で行ったよ。あの時…ゆきえを同行させるって言えば麻里亜が妬いてくれるんじゃないかって、どっかで期待してて……ハハ、本当に俺はガキで素直じゃねぇよな。京都の夜も迎えに行きゃよかったって、ずっと後悔してたしさ」
「晶人さん…」
「…今日の婚約を機に素直になろうって思ってたけど…遅すぎたんだな。…俺がもっと早く…いや、最初から麻里亜に好きだって言ってたら…未来は変わっていたのかな…」
「それは……私にもわかりません……。ですが、私は…高校の頃から好きな人がいて…でも私には決められた相手がいるからと諦めたはずなのに…やっぱり諦めきれなくて…」
「それが…そこの徳永さん、てわけか」
「……はい。ごめんなさい…」
「はぁ~あ~…」と大きく息を吐いた晶人さんは、少し清々しい顔をしていた。
「…いや、変な男に捕まるより彼で良かったと思うようにするさ。なんたってあの徳永薬品の御曹司で、しかもこんなにイケメンの頼れるいい男なんだしな、諦めもつくってもんだ。…麻里亜……いや、もう呼び捨てなんてできないか。…麻里亜さん、今まで不遜な態度で嫌な気持ちにさせて申し訳なかった。…これからは…徳永さんに幸せにしてもらえよ」
「晶人さん……ありがとうございます…」
初めて聞いた晶人さんの本心に…切なさと申し訳なさで涙が止まらなかった。
「それじゃ…」とホールから晶人さんが出ていくと、お父さんとお母さんも「先に戻るから」と出ていき、真那さんも「じゃあ、私もお先」と続いた。