初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「彩雲を見るといいことがあるって言うよ」
そう言いながら、徳永くんが私のところへ来てくれた。
…彩雲ていうのね…
「徳永くんは見たことあるの?」
「あるよ」
「いいことあった?」
「…そうだね、あったよ」
そのすごく優しい、いい笑顔を見れば、本当にいいことがあったんだね、ってわかるよ。
「そっかぁ…でも本当にキレイだね、見てて飽きないね」
…あれ?
まともに話したことなんてないのに、徳永くんには変な緊張もなくて、すんなり話せてる…
何でかな、不思議…
「うん、そうだね。…僕の事、知ってるの」
…あ!私、最初に〝徳永くん〞て言っちゃったんだ!
えっと…好きだから知ってたなんて言えないし…えっと…
「うん。徳永くん、有名人だし」
「そうなの?」
「うん、頭脳明晰、スポーツ万能、眉目秀麗な徳永薬品の息子さん、って有名だよ?」
それは本当。
いろんなとこでその話を耳にするから。
「へー…栗原さんもそう思ってる?」
えっ…
「…私を知ってるの?」
「うん、知ってたよ」
えぇ!?
「そうなんだ…珍しいね」
地味に過ごしてるのに何で知ってたんだろう。
あ!逆に地味すぎて悪目立ちしてたとか…?
「ハハッ何で知ってると珍しいの。それで、栗原さんもそう思ってるの?僕のこと」
「そう、って?」
「頭脳明晰、スポーツ万能、眉目秀麗、だっけ?」
「あ…うん、そう思うよ」
本当に。しかも優しくて性格もいいんだもん。
「そっか、ありがとう」
「いえいえ…」
これ、褒めて媚売ってるみたいに思われないかな…
「栗原さんは駅まで徒歩?」
「うん。徳永くんは?」
「僕も。だから駅まで一緒に行ってもいい?」
え!ほんとに!?
あっ、でも…
「あの…いいんだけど…歩くの遅いから無理しなくていいよ?」
一緒に下校するだなんて本当に夢みたいで嬉しいんだけど、きっと迷惑かけちゃうし。
そう思ってやんわりと遠慮したんだけど…
「栗原さんが嫌じゃなきゃ一緒に帰ろ」
って優しく微笑みかけてくれたんだ。
「うん…ありがとう」
こんな私にまでそう言ってくれるなんて、徳永くんはほんとに誰に対しても優しいんだね。
ふふ、嬉しいなぁ。