初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~

自由を手に入れた私

その日の夕方、仕事を終えた真宙が車でわが家に来てくれた。



「ああ、真宙くん、いらっしゃい。今日はお疲れ様だったね」

「おじゃまします。こちらこそ今日はありがとうございました。…それでですね、栗原社長。麻里亜さんにプロポーズを承諾してもらいました。どうか、麻里亜さんとの結婚をお許し下さい」

ソファに座るお父さんの前で、真宙が頭を下げると同時に、私もその隣で「お願いします」と頭を下げた。


「まあまあ、真宙くんも麻里亜も頭を上げて。さあ、座りなさい」

真宙と一緒に頭を上げ、顔を見合わせるとお父さんの向かいのソファに座った。


「真宙くん、今は社長じゃなくてお父さんと呼んでほしいなぁ」

お父さんが優しい笑顔で言う。

「あっそうですね。すみません、緊張しちゃってつい」

「ふふ、真宙でも緊張するんだね」

「もちろん。てゆーか今が生きてきた中で一番緊張してる」

「ハハハ、仕事では有能な男だが、仕事を離れれば一人の純朴な青年だな。…真宙くん、私達の方こそ麻里亜を選んでくれて嬉しく思っているよ。…一人娘に甘い父親なのを承知で言うが、麻里亜は頑張り屋でよくできた娘でね。きっと真宙くんにとって力強い支えになってくれると信じているよ。…麻里亜、真宙くんと幸せになるんだよ」

そう、お父さんは私達に優しくエールを送ってくれた。

「…はい…お父さん…ありがとう…」


私の頬を伝う涙を真宙がそっとハンカチで拭い、優しく笑ってくれた。

「お父さん、ありがとうございます。僕は麻里亜さんを悲しませることは絶対にしないと約束します。麻里亜さんと二人で支え合って、必ず幸せな家庭を作ります」

「あぁ、楽しみにしているよ。…おっと、ディナーは7時からだったね、金曜日のこの時間は特に道も混むし、そろそろ出た方がいいだろう」

リビングの壁掛け時計に目をやり、お父さんがそう促してくれた。

「そうですね。じゃあ行こうか、麻里亜」
「うん」

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