初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
栗原 麻里亜(くりはら まりあ)。
これが、未来に夢も希望もない私の名前。
医療用医薬品メーカー【栗原製薬㈱】の秘書課で働いていて、今年で28歳になる。
実は、栗原製薬の現社長を務める父と、栗原製薬の創業者の娘であり、専務を務める母の間に生まれた、一人娘でもある。
だけど、高校と大学の同級生には、誰にもその事を知らせていなかった。
住まいも、社長宅として知られている横浜市内の実家から離れ、都内にある私立大学の付属高校に通う間は母と二人で都内のマンションで暮らし、大学に進学してからは女子寮で生活していた。
それというのも、私には、高校生の頃から決められた許嫁がいたから…
『麻里亜には晶人(あきと)君という許嫁がいるのだから、他の男とは誰とも付き合わないように。それと、金目当ての悪い虫が寄って来ないよう、学生の間は栗原製薬の社長の娘ということも隠しておきなさい』
…これは、父に何度も言われてきた言葉。
父の言う『晶人君』とは、一般用医薬品の製薬会社である【㈱ヒラクボファーマ】の現社長の次男、平久保 晶人(ひらくぼ あきと)さんのこと。
なぜ許嫁などという話になったのかと言うと、それは今から20年近く前のこと──