初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「どうぞ」と出されたのは、ピンクとオレンジとイエローが層になってるかわいいカラーのカクテル。
「俺が思うあなたのイメージです」
「そうですか?私、こんな感じですか?」
「えぇ、甘く可愛らしいのにどことなく凛とした雰囲気があって」
優しい微笑みと共に言われ、これが女性客へのリップサービスだと分かっていても、つい嬉しくなってしまう。
「ありがとうございます、いただきます。…あぁ、冷たくて美味しい!ラズベリー…と…オレンジ…と…グレープフルーツ…」
「正解!すごいね、全部言い当てた」
「ふふ、本当に美味しいです」
ホント、甘いのにさっぱりしていて、とても飲みやすい。
すぐに飲み干してしまいそう。
「ありがとうございます。そうだ、旅行なんだっけ。女性の一人旅?」
「…はい。名目上は婚約者との旅行なんですけどね」
自嘲して言う。
「…名目上?」
「はい」
残り少しのカクテルをすぅ、と飲んだ。
ふふ、最後まで美味しい。
「次は何を?」
マスターさんが穏やかに尋ねてくれる。
「そうですね、えっと…」
今の楽しい気分に合うカクテルを思い出そうとしたのに、ふと…近い将来、自分を待ち受ける現実がちらついて…
一瞬で暗い感情に飲みこまれた。
「…どこかに…消えてしまえるような…何か…」
私は目を伏せて、ぽつ…と呟いた。
何だか気持ちが緩んで、つい本音が出てしまった。
酔うにはまだまだ早いのに。
「…え?」
あっ……マスターさんに変なこと言っちゃった。
「…ごめんなさい。えっとそれじゃあ…マンハッタンを」
「マンハッタン?結構強いけど…」
「大丈夫です、こう見えてお酒には強いみたいなので、ふふ」
「そうでしたか、それは失礼しました」
「ふふ。いいえ、ご心配いただきありがとうございます」