初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「どうぞ」
目の前に置かれたマンハッタン。
カクテル言葉は確か…『切ない恋心』。
切ない恋心、か……
ふと、徳永くんが思い出された。
私の恋心は徳永くんで立ち止まったままだもんね…
もう会うこともないのに。
一人で感傷に浸りながらグラスを目の高さまで持ち上げた。
カウンターを照らすペンダントライトの柔らかい白色が、マンハッタンの澄んだ赤色をより美しく見せてくれる。
「…キレイな色…」
そう呟き、少しだけ口に含む。
「…美味しい。今までで一番美味しいです」
「それは嬉しいな。ありがとうございます」
「えっと、一人旅の話でしたよね」
「その前にお名前をお聞きしても?」
「…麻里亜です」
「マリアさん、どの様な字を?」
「麻の葉のアサに、古里のサトと、亜細亜のア、です」
「…なるほど、素敵なお名前ですね。それで、名目上って?」
「…つまらない話なんですけど…聞いて頂けますか?」
「えぇ、俺でよければ」