初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「あっ、そういえば、ここのお店のお名前の〔iridescent clouds〕って何ていう意味なんですか?」
そうそう、聞くのを忘れるとこだった。
暗い話を断ち切るように明るく問う。
「あぁ、『彩雲』ですよ。七色に輝く雲なんですけど、知ってます?」
「そうなんですね!知ってます!彩雲は私の大切な想い出なんです!」
「想い出?聞いてもいいですか?」
「はい。高校生の時のお話なんですけどね、ふふっ」
美味しいマンハッタンで少し酔いがまわってきたのか、とても気持ちがいい。
「高校の…?」
「はい。…高校生の時、私、好きな人がいたんです。その人はとても素敵な人で、いつも周りにはたくさんの人達がいて…私は話しかけることもできなくて、ただ見てるだけで」
「…えぇ」
「3年の時に初めて彩雲を見たんですけど、その時に初めてちゃんとお話しすることができたんです、その人と」
「…えぇ」
「すごく嬉しくて…私の事も知っててくれて…ふふふ」
ほんとに嬉しかったなぁ…
あの頃の気持ちが甦ってくる。
「その彼とはどうなったんですか?」
「それがですね…夢みたいな話なんですけど…卒業式の日に…付き合ってほしいと…言ってくれたんです。…でも私は結婚するまで誰とも付き合うなと父に言われてましたので……お断りしました…」
「そう…」
「本当は私も…あなたが好きです、って言いたかったんですけどね、徳永くんに」
「徳永くん…ていうんですか、その彼は」
「あっ…すみません、つい…」
「ふっ、いいですよ。…それでその徳永くんとは?」
「大学も別でしたし、それっきり会っていません。今はきっと…素敵な女性と結婚して…幸せな家庭を築いてるんじゃないかなぁ…」
「…その彼がまだ結婚してなくて、麻里亜さんを好きでいたらどうします?」
「どうって…ふふ、そんなことあるわけないですけど…もしまた会えたら気持ちを伝えたいかな。あなたが好きで…幸せでした、って。…ただ未来は変えられないけど」
「もし未来を変えられるなら、その彼と結婚したいですか?」
「ふふっ…そんな夢みたいなこと……でも…お付き合いだけでもしてみたかったな……結婚なんて……夢のまた夢だけど……できたらどんなに幸せだろう…」
…久しぶりに強いお酒を飲んだからかな…美味しくて…酔ったみたい…
とてもふわふわして気持ちがいい……