初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
バーのマスターは顎髭がトレードマークの寺田(てらだ)さん。

彼の本職はITの開発エンジニア。
昼間は在宅で仕事をしていて、バーは趣味で開いてる。


俺が京都にある徳永薬品の関西支社に来て半年経った頃、それより前からこっちで働いてた双子の妹の真那(まな)からこのバーを紹介されて、来てみたらマスターが寺田さんだったんだ。


実は、寺田さんは俺が通ってた大学の『カクテル研究会』の先輩で、よく「いつか自分の店を持つのが夢なんだ」と語ってた。

俺は徳永薬品に入ることが決まってたから、もちろん店を持つことなんてできない。
だから、そんな夢を語れる寺田さんが羨ましかったのを覚えてる。


寺田さんが大学を卒業してからは全く音沙汰がなく、いつだったか風の噂で、どこかでバーテンをしているらしい、と耳にしたくらいだったから、ここで再会できたことに驚いた。

それからちょいちょい来るようになって、ある時カクテルを頼んだら「それくらい自分で作れ」って言われて(笑)

それで最初は自分のだけ作らせてもらってたんだけど、徐々に手伝いをさせられるようになって、今では〝神出鬼没のマスター〞とまで呼ばれてるらしい。

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