初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
でもそんな日に限って全くお客が来なくてさ。
やっぱ閉めるか…って思って、外に掛けてるopenの札を裏返そうとドアを開けたら、女性が俺の胸に飛び込んできた。
一瞬、何事!?と驚いたけど、その女性が「すみません!」と謝って顔を上げると、俺は考えるより早く「どうぞ」と店の中に迎え入れてた。
だって、その女性がさっきまで俺が想い描いていた栗原さんにそっくりだったんだよ。
せっかくだし栗原さん似のお客さんと話してから閉めるか、って思ってさ。
それだけでも何か嬉しかったんだけど、話していく内に、あれ?って思うことが増えて。
名前の漢字と…
高校の時の想い出話と…
そこに出てきた、俺の名字…
ってマジか!
マジで栗原さん本人じゃん!!
いや本当にびっくりしたからさ、驚きを隠すのが大変だった。
10年ぶりに見た28歳の栗原さんは、あの頃の上品な可愛らしさはそのままに、綺麗で凛としているのに柔らかい雰囲気をまとった素敵な大人の女性になっていた。
そして、栗原さんだと分かってから改めてよく見ると、サラサラとした癖のない髪が背中辺りまで伸びていた。
高校の頃は肩につくかつかないか位だったよね。栗原さんらしくて似合ってて好きだったんだ、あの髪型。
けど、長めの髪も今の大人の栗原さんによく似合ってて、マジで素敵なんだよ。
栗原さん…
あの頃…俺のこと、好きでいてくれたんだ…
俺達、両想いだったんだね。
あの時に付き合ってたら、今頃は仲睦まじい夫婦で、栗原さんに似たかわいい子供が何人もいたんだろうなぁ…なんて考えて顔がニヤける。
でも…そっか……
18で親に抗えない理由で、好きだった俺に断らざるをえなかったって…辛かったよな…
そりゃあ泣くはずだよな…
ごめん、栗原さん…
俺、高校生活の最後の最後に苦しめちゃったんだな…
ごめん…
だけど。
『もし未来を変えられるなら、その彼と結婚したいですか?』
の俺の問いに、こう言ってくれたよね。
『付き合ってみたかった、結婚できたらどんなに幸せだろう』
…俺はまだ諦めてないから。
「栗原さん…俺はまだあなたのことが好きだよ」
カウンターに伏せて寝ちゃった栗原さんに囁くと、今日は栗原さんの貸切にしようと思い、店を閉めることにした。