初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
ブーッ…ブーッ…
店のドアの札をclosedに返してドアの鍵をかけて戻ると、カウンター上に置かれた栗原さんのスマートフォンが振動して音を立てていた。
何気なく見ると発信者が『平久保 晶人』とある。
…男の名前か……ひらくぼ……?
もしかして…
俺はスマホを持ち、画面に表示されている〝通話〞をタップした。
「もしもし?」
『…あ?何で男?麻里亜は?』
「あぁすみません。私はバーの店員です。このスマホの持ち主の女性が休まれてましたので。起こした方がいいですか?」
『あ、何?店で寝てんの?』
「あの…失礼ですが、こちらの女性の婚約者の方ですか?」
『は?何、そんな話したの?こいつ』
「チラッとですけど、ご旅行だとお聞きして」
『あー、だったら何?』
「いえ、それならお迎えに来られるのかと」
『…いや、行かねぇけど』
「そうですか。それではどうしましょうか」
『あー、どうでもいいわ。好きにさせといて』
「かしこまりました。それでは時間をみて起こしてみます」
『あー、ハイハイ』
という言葉の後、すぐに通話が切れた。
ハァ!?
何だよ、その態度。
しかも栗原さんを〝こいつ〞呼ばわりとか…
平久保晶人、だったよな、男の名前。
…この男の事も聞きたいし、とりあえず起こしてみるか。
寝顔を俺が独り占めするのも幸せだったんだけどね。