初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~

私が初めて徳永くんを知ったのは、高校1年の夏。
美術部のミーティングが終わって一人で帰る時のこと。

生徒玄関を出て10m歩いたところで、急にザアッと雨が降ってきたの。
その日は傘を持ってきてなかったから、慌てて生徒玄関に戻ったんだ。

天気予報は雨じゃなかったし、通り雨なのかな。
じゃあ、止むか、せめて小雨になったら出よう。

…と思ってたのに、雨脚は強くなる一方で、それは次第にどしゃ降りに変わっていったの。


「うわぁ…」

これは…当分やまなさそう…
けど、カバンを傘代わりに頭に乗せて駅まで走るなんて無理だし…
そもそもずぶ濡れで電車に乗ることもできないもんね。

じゃあ高くつくけどタクシーしかないかな…


なんて、ため息混じりにそんな事を考えていたら、私の目の前に、スッとビニール傘が現れて。

見ると、それを持っていたのは知らない男子生徒で、何が起こっているのか分からなくてきょとんとしてたら、その人がフッと優しく微笑んで言ったの。

「びっくりさせてごめんね、傘が無くて困ってるみたいだったから。…これ、よかったら使って。僕、アイツと相合い傘してくから」

彼が指差した方を見ると、その先には私と同じクラスの男子がいた。


「あっ、いえ大丈夫です」

それは申し訳ないし、と咄嗟に胸の前で平手を振った。


「ビニール傘だし、返さなくてもいいよ、あげる。うちにたくさんあって困ってるくらいだから」

「や、でもそんな…」

返さなくてもいいだなんて、それこそ申し訳ないし…と躊躇していたら、少し離れた所から「おーいトクナガー、先行くぞー」と彼に向かって叫ぶ男子の声が聞こえてきた。

すると、

「あー今行く!…ってことで、じゃあ気をつけて帰ってね!ハイ!」

と、手にしていた傘を私の手に触れる近さに差し出してきたから、これは逆に受け取らない方が申し訳ないと思い、そっとその傘を手にした。

「あっ…ありがとうございます!」

そうお礼を言うと、また優しく微笑んで、お友達の方へ走って行ったの。

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