初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
……大事な女……
全身にビシャッと冷水をかけられたみたいなショックと共に、一気に夢の時間から現実へと引き戻された。
なんだ…彼女いるんじゃない…
そうだよね、こんなに素敵な人だもん、いないはずないよね。
それなのに…
いないなんて嘘を信じちゃうなんて…
バカだな、私。
騙しやすい、慣れてない女の代表格だね。
…でも、結局続けられない、先の見えない恋だもの…
これで良かったんだ。
…ずっと忘れられないほど好きだった、あの徳永くんが私を抱いてくれた。
私の初めてをもらってくれた。
それに、私を好きだと…愛してると言ってくれた、あの熱を孕んだ眼と言葉は嘘じゃないって思えるの。
だから、それがいっときの感情だったとしても、それだけで充分幸せだった。
何より、好きでもない、ましてや愛されもしない人に初めてを捧げるより、比べられないほど幸せな事だもの。
…これで良かったんだよ、麻里亜。
そう自分に言い聞かせ、バスルームを出た。
「先に入らせてくれてありがとう」
「いいえ。じゃあ俺もシャワーしてくるね」
「うん、いってらっしゃい」
真宙がバスルームに入るのを見届けると、昨日のカクテル代とメモを残し…
私はそっと…真宙の部屋を後にした。