初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「麻里亜が3か月後に婚約するんだ。相手はたぶんだけど、ヒラクボファーマの息子だと思う」
「それ、麻里亜さんに聞いたの?」
「いや、麻里亜から聞いたのは3か月後に婚約するって事と、結婚は高校生の頃から決まってたってことだけ。昨日、バーで麻里亜が寝ちゃった時に、スマホの着信に〝平久保晶人〞って出てたんだよ。俺、バーの店員として電話に出て話したんだけど、そいつが婚約者ってのは本当らしい。それにあの名前…確かヒラクボファーマの息子兄弟のどっちかの名前だった気がするんだよ」
「ふーん…でも何でヒラクボファーマなの?」
「たぶん…麻里亜は栗原製薬の娘なんだと思う。麻里亜からは何も聞いてないけど」
コーヒーを入れたカップをテーブルに置いて言う。
「え?栗原製薬ってあの?…あ、コーヒー頂くね、ありがと」
「あぁ、どうぞ。……そう、あの栗原製薬。だからヒラクボが狙ってるんじゃないかな。…そう考えると、麻里亜から聞いた政略結婚みたいなものって話とか、色々と辻褄が合いそうでさ。まぁその辺は久保さんにお願いするとして」
「そう…。それで?真宙はどうしたいの?」
「俺は麻里亜をあんなヤツに渡したくないよ、俺のものにする」
「俺のもの、ってさ…一番大事なのは麻里亜さんの気持ちじゃないの?」
「麻里亜は会社のしがらみがなければ俺がいいって言ってくれたんだよ」
「そっか、それならいいけどさ。…真宙は本社に戻るんでしょ?」
「そうだな。だからこっちは真那に任せる事になるけど…いいか?」
「あったり前じゃない!この真那さんに任せなさいな!」
グーにした手でドン!と胸を叩く妹が心強い。
てゆーか、昔から真那の方がしっかり者で強かったしな。
「ハハ、頼りになるよな、ほんと。じゃあ俺は父さんに話してみるよ」
「うん、頑張って!あたしは真宙と麻里亜さんを応援してるからね!」
「あぁ、ありがとな」
…俺が『栗原製薬の一人娘と結婚したい』つったら何て言うだろうな…
ま、何をどう言われようと、俺の決意は変わらないけど。