初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~

今日の総会の会場は、都心の一等地にある『ラピスニューロイヤルホテル』の〝慶雲(けいうん)の間〞。

私とお母さんは当日の会場の確認をするように言われたていたため、他の役員達が会社で最終打ち合わせをしている間に、先にホテルへ足を運んでいた。


ホテルの会場担当者と今日の予定の確認を終えた頃、まずはヒラクボファーマの役員と本社社員が会場入りし、続いて栗原製薬の面々もやってきた。

でも、お父さんをはじめ、うちの役員は何故だか皆さん揃って神妙な面持ち。
さっきの打ち合わせで何かあったのかな…

お母さんも「様子がおかしいわね…緊急で何か情報でも入ったのかしら」って言ってるから、私の気のせいではないみたい。


普段こういった会議の時は、私も秘書課の一員として他の役員秘書の皆さんと一緒に待機するのだけど、今日ばかりはそうもいかず、フロアより30㎝ほど高くなっているステージ上に、役員達に混じり、母の隣に座ることになっていた。

一応、端の目立たない席にいるものの、この状況に落ち着かないでいると、普段のスーツ姿ではない私がステージ上にいることを不思議がる声がホールからチラホラ聞こえてきた。

…そうよね、いくら社長の娘とはいえ秘書課の人間がここにいることは普通ではないもの。

でもまぁ…総会が終わる頃にはここにいる理由も理解してもらえるでしょう…


どんよりと暗い気持ちになり、ふぅ…とため息をついた時、後ろから「麻里亜、おはよう」と私に声がかかった。


この声は…

「…晶人さん、おはようございます。本日は宜しくお願いいたします」

椅子から立ち上がり、振り向いて姿を確認すると、丁寧に頭を下げた。

「そんなにかしこまるなって。それに〝本日は〞じゃなくて〝これからは〞だろう?…にしても今日の麻里亜は一段と素敵だね。その服も似合ってるよ」

そう言いながら私の肩に手を回してきた。


ハイ !?この手は何 !?

私の両親や役員の手前、仲がいい様に見せたいのだろうが、今までの態度が態度なだけに、正直に言わせてもらうと気味が悪い。

早くこの肩の手を退かしてもらわないと鳥肌が顔にまで表れそう…

もう我慢ができず、こそっと小声でお願いした。

「あの、晶人さん…肩の手を…」

「えっ?あぁごめんごめん、皆の前では恥ずかしかったか。麻里亜は本当に可愛いな、ははは」


ヒィ!なっ何なの!?
全身鳥肌なんですけど!


「じゃあまた後でな、麻里亜」

「は…はい」


その笑顔がまたぞわぞわを増長させ、その範囲は頭皮にまで及んできたみたい。ぞわぞわ。

私…髪の毛、逆立ってないかしら…

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