初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
本日のメインとなる議題である【栗原製薬とヒラクボファーマの今後の経営展開】について平久保社長が話し始めたのだが、やはり、眠気を誘う無駄話が続いた。

あぁ…睡眠時間は充分だったはずなのにあくびが出そう…でもここはステージ上だし我慢しなきゃ…

などと忍耐力を試されること10分。ようやく本題に入ると、それに気づいたフロアにいる両社の社員達もピシッと姿勢を正して聞き始めた。


そして話も中盤にさしかかり〝時期を見て栗原製薬を買収する〞という内容に触れたその時だった。


「平久保社長、その件について私からも少々宜しいですか?」

お父さん、…いえ、栗原製薬の社長が声をあげた。


ここは平久保社長が全て話す場面のはずなのに…


そのお父さんの発言はシナリオにはない予定外の事で、平久保社長も動揺しているように見えたが、さすがにこの状況では無視することもできなかった様で、平久保社長は話を止めた。

「あ、あぁ…何ですかな、栗原社長」


すると、お父さんがすかさず話し始めたのだけど、最後の、この言葉に耳を疑った。


「……そして、先ほど平久保社長から、今後、我が栗原製薬を買収するという話が出ましたが……弊社は買収を拒否します」


一瞬、しん…と音がなくなった会場が、一気にざわついた。

もちろん私もこれは寝耳に水で、一般社員と同様に驚きを隠せずにいたけど、お母さんも副社長の正幸おじさんや役員の方々もこれを知っていたのか、落ち着いた様子だった。


すると、驚きを隠さなかった平久保社長が我に返るや否や、お父さんに食って掛かった。

「なっ…栗原さん、今さら何を言うんだ!」


「聞き取れませんでしたか?ならば、もう一度言いましょう。弊社は買収を拒否します」



何?どうなってるの?

どういうこと?お父さん…

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