想っていたのは私だけでした

殿下視点

ここムジュール王国の第3王子として生を受けた私ことゼイン・スウォード・ムジュールは、隣にピッタリと歩く男を見て微笑む。


そこらの令嬢よりも綺麗に手入れされたシルバーグレーの髪、それなりに鍛えているであろう身体、おまけに強力な魔力を持つ男。
 それなりにというのはどうも、この男は室外よりも室内が好きな傾向がある。引きこもり体質か。魔法に絶対的な自信を持っているので、有事の際も魔法頼り。その為剣術を疎かにしていたふしがある。私の護衛となってからは考えを改めたようだが。

それがこの男アルバート・クロフトという奴だ
クロフト侯爵家の次男━家督を継承しないが功績を上げたため自身は伯爵の爵位を持つ。おまけに紫の瞳持ち


数多の独身令嬢からの求婚の申し入れも絶えないと聞く。が…興味を示さん
魔法の研究が楽しいのかはたまた理想が高いのか

魔力の高いものは後継に遺伝する可能性高い為、結婚は貴族のそれよりも強い義務が生じる

友として心配もするが、こればかりはどうも…

いかんせん私自身も独身だしな
3番目というのも厄介だな
 自身もアルと同様に魔力に絶対の自信を持っている。王家代々の黄金色の瞳持ちであり光の魔力も扱える。 

まぁその過信があり、魔物の討伐に隊を結成することなく2人で始末しようと臨んだ結果が昨日の怪我だが。人間驕りと油断は禁物だな

 「ところでアル、彼女には身分を伏せよう。あんな怪我をしたなどプライドが許さん」

「は?殿下」
「その殿下もやめろ」
「もう何度も呼んでしまったので遅いかと…」

「まぁ、分かっていても気づかないふりというのも必要どからな。アル、ふーむ、
紫、パープル、バイオレット…アメジスト…綺麗すぎるな、アメにしよう。私はそうだな…」

(そんな適当な)と言いつつも
アルはその後の私の言葉を待つ
真面目すぎて嘘はつけない男だからな

「よし、私のことはディーと」

「ディー?ですか」

「お前がでんかと言いそうになっても、途中でごまかせるだろう」

「はぁ、でん…で、で、でぃー」


ぶつぶつとつぶやくアル

やはり難しいか
「アル、ならば、デー と呼べ。勿論呼び捨てだ。それくらいならお前にもできるだろう」

「デー…お、おそらくは」

「はは、お前は本当に真面目だな。さてと到着したぞ」
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