想っていたのは私だけでした

22

「あ、お疲れ様です、殿下、そろそろ撤収してもよろしいでしょうか?」


レオナルドは殿下に敬礼した後尋ねる

「あぁ、ご苦労だった…と言いたいところだが。あれはどういうことだ!レオナルド!なぜ彼女を巻き込む!」

ふとスミレに顔を向けて、「スミレ、本当にすまなかった大丈夫か?」と声をかける。

スミレは今度こそアルから離れようと思い、お礼を言い離れる。

「は、はい、なんとか。デーさん、これはいったい…?」

「殿下、どういうことです?」

怪訝な顔を殿下に向けるも、スミレへハンカチを渡そうとポケットへ手を入れるアル。

「!」

手の感触からこれはハンカチではないと、間一髪取りださなくて良かったとホッとする。
気を取り直し胸元のポケットからハンカチを取り出すアル。

スミレは「ありがとうございます」と目元を拭う。泣き腫らした顔をあまり見られないように、スミレはハンカチで鼻と口の部分を隠しながら話す

「あぁ」と嬉しそうな顔をするアル

そんな2人の様子を見て、「色々聞きたいことがあるだろうが、アルに任せる。レオナルドこっちへ」

「殿下、私にも説明を!」
「あぁ後でな」


殿下はレオナルドを伴って去って行った


「皆集合!」

レオナルドは周囲に声をかける

「殿下だ、やっと終わりかー」
「さっきのはすごかったな」
「俺死ぬかと思った」

皆疲れている様子で、ダラダラ動き整列して、並ぶ


「殿下、本当に必要な訓練だったのですか?」

「お前達は私を疑うのか?
いいか、潜入捜査がいつ必要になるか分からん!
どんな状況でもそこに溶け込み役に徹する。これが鉄則だ!」


「はぁ…、ですが、さっきのはさすがに死にそうでした」
「守って下さりありがとうございます!」



「お前達を守るのは当然のことだ。アルの暴走を予想でかなかった私の責任でもあるからな。そのことはいい。
 が!さっきの失態は何だ!誰が囚人を連れてきた!」


殿下はどいつだ!名乗り出ろと言わんばかりに詰問する
 

赤髪の男が「あのー」とおずおずと手を挙げる

「ん?お前か?デリック!」
殿下はずかずかと赤髪の男の前に近づいて行く

「は、は、はい!ですが、あれは殿下のご指示に従ったまでです」

「私が?」

デリックは目の前にいる殿下から睨まれ萎縮しながらも、何とか先を続ける

「は、はい、殿下が、使えそうな者は誰でもと」

「お前、それはな…」

「なので、比較的軽い罪の者達の中から選びました。人相や振る舞いなどから、ガラの悪そうな、闇市の信憑性もでるかと思いまして!」


デリックは正しく従っただけだと信じている


「ガラの悪いというか頭の悪いの間違いだろ、あれは」

「面白いことおっしゃいますね、おっしゃる通りです」

気が緩み始めたデリックはヘラヘラと返答する

「ふざけるな!そんなこと許可してない!それになぜ一般人の彼女が拉致されている!おまけに怪我まで負わせて!それでもお前達は騎士か!」

「あ、あれも演技だと」
「確かに見たことない娘さんだなとは思いましたけど、なぁ?」
「演技に、磨きかかってるなと」
「闇市が行われてるようにと言われたから、てっきり、騎士が捕まえに来て応戦する訓練だと。なぁ」

「あぁ、悪者役と捕まえる組がいるんだろこれって」

一斉に騒ぎ出す騎士達

「違う!捕まえるものなどいない。
デリックなぜ監視してない!
あの者達はここを闇市と勘違いして、本当に稼いで逃げようとしてたようだぞ」


「あ、ちょっと目を離した時ありましたが、すぐに戻ってきたので問題ないかと」



「デリック!お前はたるんでいるな!
ちょっとの気の緩みが命とりになることもある。こんな簡単な任務もこなせないようでは!

特別に私が稽古をつける!他の者は撤収!」


「勘弁してください殿下ー」項垂れるデリックを容赦なく稽古という名の元、しばき倒す殿下

その様子遠巻きに眺め俺たちも気をつけようとゆっくり片付けに向かう

その様子を見た殿下は一喝する

「いいか!モタモタするな!
皆、5分で撤収!」

「はぁ」
「ひぇー」
「俺、さっき酒飲んじゃったよ」

「ぐずぐずするな!急げ!」

バタバタと慌てて走りたる者に、殿下はそうだったと声をかける

「撤収したらその後は飲み会だ!
勿論私の驕りだ 無礼講でな。」

「うぉー」
「まじで?」
「殿下の驕りということは上手い店だな」
「よし、急ぐぞ!」

だらけていたのに、急に活気づき動きが機敏になると、そそくさと皆退散していった


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