Depend on…


「しぃちゃんだって、あたしのこと『貴女』って呼ぶじゃん……」


しばらくして、大人しくしていた樹がぽつりと呟いた。


椎名にしてみれば、痛いところを突かれたというところだ。


確かに、椎名は樹のことを名前では呼ばない。


名前で呼べば情が移る。


情が移れば仕事がやりにくくなる。


経験上、それは100%言い切れる。


「愛がないなぁ……。」


答えない椎名を茶化すように言う。


「愛って……。」


「――お前たち……」


樹に冷たい視線を投げ付けた椎名は後ろからの突然の声に驚いた。


「全ったく進んでないじゃないか……」


「局長!こんなところに閉じ込められていたら、進むものも進まないですよ!」


樹の訴えに局長は、頭を掻いて脇に抱えていたファイルを差し出した。


「なんですか、これ。」


「この前、確保した3人が所持していた薬のリストだ。

あいつら、意外に口が堅くてな……

入手ルートはまだ分かってないが、それだけでもかなり……」


「……何これ……。」


樹が資料を見て顔色を変えたので、椎名も覗き込む。


「……嘘だろう。」


そこには、ざっと10種類を超える薬物名がずらっと並んでいた。


「――それだけでも、かなりゾッとするだろう……?」
< 27 / 85 >

この作品をシェア

pagetop