Depend on…
「しかも、ただのスケープゴートじゃない。
あたしらに対する挑戦だよ。
挑発…力の誇示……。」
自分達はこれだけの薬を所持しているのだというアピールだと樹は言う。
「そんな……何のために?」
「だから、あたしたちERSAへの挑戦でしょ。」
「じゃあ、もしかしてあの時、何処からか見られてた――?」
樹は無言で頷く。
なるほど――。
たったあれだけの情報で、ここまで推測出来るとは……
さすが入局当初から金城に現場を連れ回されただけはあるということか――。
「しぃちゃんがチンピラにやられかけてるのも、ばっちし見てただろうね。」
樹が意地悪く笑うと椎名は顔を赤らめて「それは言わないで下さい。」と言った。
「あの時といえば。あの日、あたしたちはサポート要員だったってこと、分かってる?」
「分かっています……」
何を今更、と顔をしかめる。
自分が悪いが、いつまでもぐちぐちと言われるのは、やはり良いものではない。
「分かってるならいいんだけどさ。しぃちゃんらしくないなぁと思って。」
「それは――……」
椎名が言葉に詰まると、樹はそれ以上何を言うわけでもなく黙り込んだ。
「さて、仕事するかなぁ。」
しばらくの沈黙の後、ずっと右手で弄んでいた煙草でトンッと机を叩いた。
樹が考え事をしているとき、彼女の右手は煙草を弄ぶ。
それだけのために彼女は煙草を買う。
煙草は決して火を点けられることもなく彼女手元で回る。
まるで、答えを――愛しい人を探すように――……