Depend on…
「どう思いますか?」
局長に頼まれた「別件」を捜査すべく、街の中心部に来ていた。
椎名はこうした人込みが嫌いだった。
これでは、どんなに神経を張り巡らせても敵の奇襲を防ぎ切れない――
などと考えてしまう辺り、職業病なのだろう。
自分でも笑えてしまう。
「……どうって言われてもなぁ……」
樹は困ったように頭を掻く。
局長に言い渡された任務は3人の男が持っていた薬の出所を探ること――
「顔は見たことがないそうだ。今まで携帯電話で指示を受けていたらしい。」
「そんな怪しい指示に大人しく従っていたと?」
局長は頷き話を続ける。
「相手は若い男の声で姿を現さないが、男たちのことは監視していたようだ。
それを臭わせる発言が何度かあったらしい。」
「何故、彼らは……」
「簡単だよ。従わざるをえない理由があった。」
黙って聞いていた樹が言う。
「……脅されていた?」
「よく出来ました。」
「断れないような前科があるならそこから調べていけますね。」
「ケータイの番号を知っていたことからしても、まずは関係者から当たるのが道理ってとこだね。」
「局長、あの3人の身元は……局長?」
しばらく2人のやり取りを見ていた局長が穏やかに微笑んでいた。
「いや、すまない。
彼らの身元や前科に関する資料は全て県警に預けてある。
この件は2人に一任する。
何か分かったら必ず報告するように。」