Depend on…
こうして、一任された椎名たちは資料を受け取りに県警に向かっていた。
「まだ情報が少な過ぎるよ。まだ何とも言えない。」
情報が少な過ぎるために、あらゆる場合が想定されて頭が混乱しているのが手に取るように分かる。
「山添さん!お久しぶりですぅ。元気でしたかぁ?」
着くやいなや、目ざとく樹を見つけ、嬉しそうに鳥居舞が駆け寄ってきた。
なんだか甘ったるい声が椎名は苦手だ。
「鳥ちゃん!久しぶりだね〜。
最近、ご無沙汰しちゃってごめんね。」
そう言いながら、くいっと酒を呑むジェスチャーをする。
鳥居は樹と同期だが、鳥居は大卒で事務員。
つまり、樹よりも年上である。
それでも、「トリ」なんていう、ただ苗字を省略しただけとも言えるようなあだ名で呼んでしまうところが樹らしい。
鳥居は何か話したそうにしていたが、もう休憩時間が終わりであることを確認すると、名残惜しそうに樹の手を握り、「近いうちに絶対、絶対呑みに行こうね!」と念を押して仕事へと戻っていった。
「鳥ちゃん、なかなかいい性格してんだよ。」
初めて彼女に会ったとき、樹が楽しそうに笑っていたのが印象的だった。