Depend on…
そのままERSAに戻るかと思いきや、樹は小さな公園に立ち寄った。
「さーて、何が出て来るのかなー……」
「ちょ……!?
ここで開けるんですか!?
まずは局長に……」
「堅いこと言わない!しぃちゃんだって手柄、欲しいでしょ?」
別にERSAでの手柄に興味はなかったが、止めても無駄そうなので、そのまま見守ることにした。
「一人目は……宮村孝一、27歳。半年前までゼノンの派遣社員だった――…」
「ゼノンって通信機器とかがメインの大手電気メーカーですよね。」
「おそらくね。お客様サービスセンター担当(エアコン、床暖設置サービス等)って書いてある。」
「かっこ」まで細かく読み上げる。
そんな樹の横で椎名は誰かに聞かれてはいないかと、そわそわしながら聞いていた。
ただでさえプライバシーの保護だなんだと騒がしこのご時世に、操作機密をこんな所で広げなくても……
「派遣切りに遇って退社……ということでしょうか?」
「うーん……」
椎名の問いかけには、はっきり答えず、樹は次の資料を取り出す。
「木本孝幸……あ、同い年だ。」
「何歳ですか?」
「何言ってんの、自分の歳でもあるでしょうが。23だよ、にじゅーさん。」
「あ、そうでしたよね。」
「ったく、変なトコ天然なんだから……」
まさか、「本人の口からきちんと年齢を聞きたかった」とは言えず、椎名は笑って誤魔化すしかなかった――。