Depend on…


「お待たせ。はい、これ。」


「……ありがとうございます。」


樹が何事もなかったように振る舞うならば、自分もそうするしかない。


椎名は懸命に笑顔を作りコーヒーを受け取る。


コーヒーの香りで少しだけ落ち着く。

安い缶コーヒーの中では珍しくコーヒーらしい香りのしっかりしたこれが椎名のお気に入りだった。


「資料見た?3人目は菱川達夫、32歳。現在、無職。」


「はい。菱川は介護士で半年前まで在宅介護ケアサービスの仕事をしていたようですね。」


「うーん……特に共通点はナシ?」


「何言ってるんですか!!?」


樹の見解に慌てて待ったをかける。

「3人とも現在無職っていう分かりやすい共通点があるじゃないですか!」


「そっ、それくらいは分かってるよ……!
そうじゃなくて、出身地が同じとか、同じ病院に入院してたとか……」


樹も慌てて弁解するが、「現在無職」は共通点としてカウントしていなかったようだ。

当たり前に目の前にぶら下がっている情報も軽視してはいけない。


「それに、それぞれの勤め先を辞めたタイミング……3人とも同じ半年前です。」


「確かに……でも、それが何か関係ある?」


「こうは考えられませんか?
半年前、仕事を辞めなきゃいけない理由が出来た……」


「たまたま3人とも半年前に失業したんじゃなくて?」


椎名は頷く。


「さっき、局長と話したようにあの3人は脅されていた可能性があります。
あくまで予想ですが、半年前に脅されるような何があったんじゃないでしょうか?」
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