Depend on…


「何か弱みを握られた……!」


「はい。闇雲に粗探しをするよりも、半年前より少し前くらいの情報を集めるのが良いかと思います。」


なるほど、と樹は深く納得する。

椎名と一緒に行動するようになって2ヶ月、「考える」という作業は椎名に任せきりだ。


椎名の評価する樹の思考は、その殆どが直感とひらめき。

良くて根拠は「経験」。


根拠を踏まえた理論的な思考構築は苦手だった。

新人の時、それは金城の仕事だった。


父のような厳しさと、兄のような優しさ、時には恋人のような甘さで樹に麻取りのノウハウを叩き込んだ男……

その男の面影を時折、この新しい相方に見ることが樹は非常に腹立たしかった。


それと同時に唯一無二の親友の面影までもが重なって見えることが樹を更に苛立たせた。


2人の代わりなどいるはずがないのに……


もちろん、誰も誰の代わりになどなれない。


椎名だって例外ではない。


椎名千秋という1人の人間を見るにも、イメージが重なるということは煩わしい。


彼らと同様の働きを期待してしまうのだ。


勝手に期待して、その期待が裏切られたからといって、椎名自身の評価を下げられたら不本意に違いない。


ともかく、何故2人と椎名のイメージが重なるのか分からないまま、気がつくと2ヶ月も経過していたのだから困ったものである。
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