Depend on…


「それで?何か分かった?」

翌朝、椎名が「おはようございます」と返し終わらないうちに、樹が急かして来た。

「はい。宮村は退社する少し前に職質を受けています。」


「なんで?」


「夜中にマンション付近をうろついている不審者がいると住民から通報があったようです。」


「ふーん……で、結局なんだったわけ?」


「昼間、そのマンションにエアコンの取付け工事に来た時に、財布を落としたとかで、それを探しに来ていたようです。」


翌日、マンション付近の植え込みから免許証が出て来て、宮村は無事に釈放されたという。


「あとの2人に関しては何の前歴も見当たりませんでした。」


強いて言うなら、菱川の退社は宮村の少し後だということくらいで、木元も菱川も平凡な人生だ。


「あ、それから、やはり菱川の勤めていた会社、宮村の勤めていた派遣会社…イノセントグループの傘下でした。」


「……よく働くねぇ。」


口を開いたのは大阪だった。

2人のやり取り……と言うより、椎名の読み上げた情報を聞きながら口を挟むタイミングを狙っていたようだ。


「いえ、これくらいは普通ですよ。」


同意を求めようと坂東を見るが坂東も苦笑いだ。


「何なら交換してもいいですよ、大阪さん。」


樹が悪戯っぽく笑う。


「無理無理!ついて行けないよ〜……」


「ちょっと、2人とも。ヒトをモノみたいに……」


くだらないやり取りだと思いながらも、思わず口を挟む。


「聞き込みに行くって言ったのは貴女ですよ!」


そう言って立ち上がると樹を待たず、部屋を出る。


「仕事は早く終わらせる」んだ。


馴れ合っている暇などない。


その背中にある種の恐れと決意が見えるようだった――…
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