Depend on…
2人は先ず、宮村が派遣社員として勤めていたゼノンを訪れた。
大手電気メーカーであるからか、支局といえど大きく立派なビルだ。
事前に……と、言っても、ほんの1時間前にアポを取っておいたおかげで、受け付けに行くと、すんなりと通してくれた。
応接室に通されて間もなく、眼鏡をかけた小柄な男が現れた。
「突然、お伺いしてすみません。私、ERSAの捜査員の山添と言います。」
言い慣れない「わたくし」を噛まないように、ゆっくり発音する樹に続いて椎名も名刺を渡す。
「とんでもございません。私どもでお力になれることがありましたら……」
いかにも、気の弱そうな男は人事部長の浅井と名乗った。
入って来たときから、頭をペコペコし通しだ。
見ている方が酔ってしまいそうだ。
事の経緯を話すと派遣会社から送られて来たという宮村の履歴書のコピーを取り出して、退社したときの様子を話し始めた。
「彼は自分から辞めたいと言ってきたんです。
我々が強要したわけではありません。」
「突然ですか?」
浅井は頷く。
「彼の仕事は誰にでも出来る簡単なものでしたし、我々としても、やる気のない人間をいつまでも雇っていても仕方ないので、彼の申し出を了承したのです。」
「1つ、お聞きしたいんですが――……」
樹が低く、口を開いた……