Depend on…


自己紹介が済んでから、黙り込んでいた樹は、真っ直ぐに浅井を見ていた。


睨むかのようなその視線に浅井が怯む。

そこで初めて、浅井が落ち着かないのは、動揺しているからだと、椎名にも分かった。


「ここに、山田という男が働いていましたよね。
この男の履歴書も見せて頂きたいのですが……」


樹が何を出したのか、椎名は…おそらく、浅井も分からなかった。


「山田は3ヶ月前にここを辞めてるはずなんですが―…」


「あ、あの、その者が何か――…?」


その言葉を待ってましたと言うように樹の目が光った。


「1時間ですよ。」


「――…え?」


「我々が、こちらに伺おうとアポイントメントを取り付けたのは1時間前です。」


言いながら樹は立ち上がる。


「この会社の派遣会社の数は関東圏の支部だけ数えても242人。
全ての人事資料は本部に集められる。
まして、半年も前に退社した者のものです。
ここまで、資料を揃えて頂けるとは思っていませんでした。」


にっこりと微笑んでみせる。
椎名は黙って樹と、青くなっていく浅井をただ見ていた。


「山田はここを辞めてまだ3ヶ月です。
1時間程なら我々も待てますので……用意、して頂けますか?」
< 46 / 85 >

この作品をシェア

pagetop