Depend on…
「あー!もー!むーかーつーくーっ!」
ゼノンをあとにした2人は、とりあえず車に戻ったが、樹の機嫌は最悪だった。
ドアを閉める力に憎しみがこもっている。
椎名は運転席に乗り込むと疑問だった事をやっと口にした。
「何なんだったんですか、さっきの。」
「……知ってたんだ。」
「え?」
「あの浅井って奴、あたしたちが来ること知ってたんだよ。」
腕を組み、悔しそうに唇を噛む。
「え、どうして…――?」
「知るわけないでしょ!そんなこと!」
ばちん!と自分の腿を思いきり叩く。
樹は完全に腹を立てているようだ。
こうなると、ごく普通の会話さえも困難になるんだよな……と、思いつつも、聞かない訳にはいかない椎名は覚悟を決めた。
「そうじゃなくて、どうして分かったんですか。そんなこと。」
出来るだけ、これ以上、樹の機嫌が悪くならないように、ゆっくり話す。
「さっきも少し言ったけど、あぁいう大手企業の多くは保管書類を本部に集めてることが多いの。
この支部で働いてる人間のものならともかく、半年前に辞めた人間の書類なんて、とっくに破棄しちゃってるか、倉庫行きなのよ。」
「……それにしては、書類の準備が良すぎたと……」
「そういうこと。」
樹は、じっと前を見たまま答える。
何か他の事を考えながら話しているに違いない。