Depend on…
目的の場所は思ったよりも近く、住宅街と言うよりは団地だった。
同じような外観の建物が並ぶ中で樹と椎名は11号舎の5階にある愛染(あいぜん)宅に向かった。
玄関は北向きになっているらしく、全体的に暗く、じめじめとした雰囲気だ。
「ごめんくださーい!」
ピンポーンと何度か呼び鈴を鳴らすとやっと、少しだけ扉が開いた。
「……どちらさまですか?」
顔を出した女性は、弱々しい声でそう答えた。
よく見えないが、頬がこけて、顔色も良くないようだ。
「我々、ERAS……関東麻薬取締役局の者ですが――……」
そう樹が名乗ると、女性ははっとした様子で、慌ててドアを閉めようとした。
しかし、樹が間一髪ドアに足を挟み込んで無理矢理引き止めた。
「――……逃げることないじゃないですか。お話伺いたいだけなんですよ。」
まるで悪役だ……!
こんなんで話が聞ける訳がない。
椎名は慌てて樹と交代する。