Depend on…
「突然すみません。
何度かお電話を頂いているようなんですが……
何かお困りなのではないですか?」
椎名が出来るだけ笑顔で、丁寧な言葉遣いで言う。
それでも、女性は探るような目付きで椎名を見る。
「お母さん?どうしたの?
お客さん?」
突然、女性の後ろから少女の声がした。
その途端に、女性が
「アンタは出て来るんじゃない!」
と叫び、樹たちに向き直ると
「今日はもう帰って下さい!」
そう言うなり乱暴にドアを閉めてしまった。
「あ、ちょっ……!」
「……嫌な臭いがする。」
「――…え?」
「死人の臭いだ。」
「別に何も臭いませんでしたよ。
まして、死臭なんて……」
樹の言葉に椎名は首を傾げる。
「違うよ……そういうんじゃないんだ。
人が死ぬのは命が尽きるときだけじゃないんだよ――……」
見えないはずの、その向こうが見えているように、樹はじっと古ぼけた社宅のドアを見つめていた――……