Depend on…
「泰蔵、それ急ぎ?」
妙な空気を察したのか、泰蔵は少し考えて
「……まぁ、出来れば……」
と少し控え目に言った。
「あぁ、いいの、いいの。
あたしらは別に急ぎじゃないから、
終わったらケータイに連絡ちょーだい。」
泰蔵が愛染宅に向かうのを見届けて、樹は階段を下り始める。
慌てて後を追う椎名だったが、樹はすぐ下の踊場で立ち止まっていた。
「どうかしたん――」
「しっ!」
再び階段を上ると物音を立てないように、影からそっと様子を伺う。
椎名も一緒に覗き込む。
泰蔵が呼び鈴を鳴らすと慣れた様子で開かれたドアに入って行く。
出迎えたのはおそらく先程の母親だと思われるが、さっきまでのヒステリックな感じは見られない。