Depend on…
「ともかく、本部に戻ろう……」
「……はい。」
そう呟く樹には珍しく疲れが滲んでいた。
本部に戻ると他の3人もまだ帰宅せずに残業をしていた。
「おかえり」
と口々に迎えてくれる。
それに椎名は未だ慣れずにいた。
(ここは俺の帰る場所ではない――……)
しかし――……
これまでの人生の中で「おかえり」と言って自分を温かく迎えてくれた場所はあっただろうか。
記憶に残る「おかえり」という言葉はたった一人の男を連想させ、同時に不快感までもが込み上げる。
ただ、ERSAの面々から発せられるそれはまるで全く別の言葉のような響きだ。
「ただいまー!帰りましたー!」
「……言い方、おかしくないですか?」
「なんで?
おかえりって言われたら、ただいまでしょ?
ほらっ!しぃちゃんも!」
「………只今帰りました。」
「可愛くなーい!」
「可愛くなくて結構です。」
「お腹空いたー」とフラフラ歩き出す樹の背中にため息を投げ付けてやった。
(さっきまでの疲れは何処に行ったんだ……)
「疲れを必死に隠してるんだよ。
我々に心配を掛けないように。」
局長が椎名の肩を叩く。
「そうでしょうか……?」
椎名は自分のパートナーの小さな背中を見つめた――……