Depend on…


「ともかく、本部に戻ろう……」


「……はい。」


そう呟く樹には珍しく疲れが滲んでいた。


本部に戻ると他の3人もまだ帰宅せずに残業をしていた。


「おかえり」


と口々に迎えてくれる。


それに椎名は未だ慣れずにいた。


(ここは俺の帰る場所ではない――……)


しかし――……


これまでの人生の中で「おかえり」と言って自分を温かく迎えてくれた場所はあっただろうか。


記憶に残る「おかえり」という言葉はたった一人の男を連想させ、同時に不快感までもが込み上げる。


ただ、ERSAの面々から発せられるそれはまるで全く別の言葉のような響きだ。


「ただいまー!帰りましたー!」


「……言い方、おかしくないですか?」


「なんで?

おかえりって言われたら、ただいまでしょ?

ほらっ!しぃちゃんも!」


「………只今帰りました。」


「可愛くなーい!」


「可愛くなくて結構です。」


「お腹空いたー」とフラフラ歩き出す樹の背中にため息を投げ付けてやった。


(さっきまでの疲れは何処に行ったんだ……)


「疲れを必死に隠してるんだよ。

我々に心配を掛けないように。」


局長が椎名の肩を叩く。


「そうでしょうか……?」


椎名は自分のパートナーの小さな背中を見つめた――……
< 63 / 85 >

この作品をシェア

pagetop