Depend on…
その翌日は報告書類に追われてしまった。
書類をまとめるついでに情報を整理しておこうと言い出したのは意外にも樹の方だ。
椎名もちょうどそうするべきだと思っていたので素直にそれに従う。
「あっ!」
「何!?」
「あ、いえ、すみません。
この前、県警で会った井原って覚えてますか?」
「あぁ、あの……」
その後に続く何と言う言葉を飲み込んだのか、分からないが、樹の表情から覚えていると判断し、話を続ける。
「今、県警のデータベースにアクセスしたんですが……」
「アクセスしたんですが……って、それって簡単に出来るもんなの?」
「何言ってるんですか。
出来ますよ。
県警と麻薬取締局と警視庁はお互いの間で情報の共有をしています。」
「そう……だったんだ。パソコンってどうも苦手でさ。」
「まぁ、一部の機密資料は除かれますが。
警視庁はその『一部』が『大部分』なんですよ。」
「へぇ……。しぃちゃんは詳しいね?」
「違います。貴女が知らなさ過ぎなんです。
パソコン、使えた方がいいですよ。」
「んー……じゃあ、今度教えてよ。
大阪さんの説明、ちょーっと分かり辛いんだよね。」
あはっと苦笑いする樹。
大阪が樹に教えている様を想像して、椎名も苦笑した。
「ちょーっと」と言う表現は彼女なりの配慮だということも想像がつく。
「……分かりました。
今度、時間が取れた時には必ず。」
約束ね、と樹は指切りのジェスチャーをして笑った。