Depend on…
「あ、話ズレちゃった。
それで、井原さんがどうかしたの?」
「あぁ、それで井原のヤツ、凄い検挙率なんですよ。
一人だけ毎月県警の出す検挙ノルマ達成してるんです。」
そう言いながらディスプレイのグラフを見せる。
「本当だ……これは、本当に鼻が利くのか、それとも――」
「それとも何ですか?」
「……言うとしぃちゃん怒るから言わない。」
「……そこまで言われれば大体察しは付きます。
井原が何か手を回してる可能性があるってことですね。」
椎名にそう言われ、樹はバツが悪そうに頭を掻く。
「貴女の考えそうなことがそろそろ分かって来ましたよ。」
「でも、俺の知る限り井原は、それほど度胸のある人間ではないですよ。」
「度胸の問題じゃないの。
三課の刑事の中では裏に子飼いがいるのは珍しい事じゃなくて、そういう刑事は結構多いって聞く。」
「つまり?」
「つまり、教育係りの刑事がそういう刑事だったら、それが当たり前の捜査になる。」
「なるほど……で、俺は貴女の子飼いには会わせて貰えないんですか?」
椎名の問いに樹は目を丸くし、そして腹を抱えて笑い出した。
「な、なんですか……」
「いやー、面白い。面白いよ、しぃちゃん。」
笑いながらそう言ったかと思うと、今度は急に真顔になって言う。
「あたしにそんなものは必要ないの。
飼うなんて優しいこと出来ないから、
あたしは一人残らず捕まえる。」
その鋭い眼光に、椎名はまるで自分に向けて発せられた言葉のようなプレッシャーを感じるのだった……