Depend on…


「あくまでもソレは取引なの。

そして相手は犯罪者。

お互いにそれなりのリスクを抱えて行うのよ。

そんな割に合わないリスク、御免だわ。」


「おかしいですね。」


「……何がよ。」


「それは貴女の言葉じゃないでしょう。

貴女はただ売人……犯罪者と手を組むような形が気に入らない。

そう思ってるんですよね。

それでも別に良いと思いますけど。

何で隠そうとするのか理解出来ません。」


と首を傾げパソコンに向き直る椎名に樹は何も言えず、ただその相棒を見つめた。


『これは俺の理論だがな。』


あの男の言葉が蘇る。

たった一人の相棒――金城要。

ふと思い出す彼はいつもタバコをふかしている。


『お前はもうちょっと感情を上手く隠せ!

恨みも憎しみも表に出し過ぎなんだよ。

牙は隠せ。

隠して隠して温存しろ。

剥き出したままにしておくと大事なもんまで傷付けるぞ。

そんなもんは凶器じゃなく、狂器に成り下がる。

狂器じゃ大事なもんは守れねぇ。』


「…………金城……」


「え?今何か……」


「なんでもないっ!」


そう怒鳴ると樹はくるりと椎名に背中を向ける。


それを見て椎名は小さく溜息をつくと「コーヒーを入れます。」と立ち上がった。


「……念のため、井原さんには注意してね。」


向こうを向いたまま、樹が呟く。


「分かってます。」とコーヒーを差し出すと樹は「それならいいんだけど」とそれを受け取った。
< 66 / 85 >

この作品をシェア

pagetop