Depend on…


「定時ですけど、今日は残業するんですか?」


夕方、相変わらず自分に背中を向けたままの樹に声を掛けた椎名だったが返事がない。


「……」


「……聞こえてますか?」


「――え……あ、ごめん。何?」


最初より少し強めに声を掛けると今度はちゃんと返事があった。


「……まさか、寝てたんじゃ……」


「違う!寝てない!

ちょっと考えてただけ!」


「そうですか」と答ながらも疑いの眼差しを向ける椎名に「本当だって!」と反論する樹。


「帰ればいいんでしょ、帰れば。」


「別にそうは言ってないじゃないですか……

あれ?その資料持ち帰るんですか?」


樹が小脇に抱えた茶封筒は県警から預かった捜査資料だ。


「うん。――しぃちゃん見たかった?」


「――いえ、俺は後で構いません。」


「そう?じゃあ借りてくね。」


そう言うと樹は足早に本部を後にしたのだった。
< 67 / 85 >

この作品をシェア

pagetop