Depend on…


警察病院へ運ばれた大阪の治療が終わるまで、樹は一言も口をきかなかった。


治療が終わり、大阪の手は何処まで回復するか、今の段階では何とも言えないと医師から通達された。


診断結果を聞いても樹が帰る気配は一向にない。


その傍らで椎名は先程のやり取りをよく思い返していた。


(彼女宛の郵便物が届いていた。

中身は……分からないが、大阪さんは知っている風だった。


でも、中身は違っていた。


そして、彼女はそれを開けようとせず、俺に渡し……


俺に開けさせようとした――……)



――何のために?





(……俺に怪我を負わせるため――……)




横にいる樹を見る。



顔色が悪く、組んだ手を口元に当て、じっと一点を見つめたまま動かない。



(……この人が俺を――…)


信じられない、と頭を振る。

だが、日頃の大胆かつ容赦ない言動を考えれば有り得なくないとも思える。


それに、井原の言っていたこと――……


(まだ判断するには早過ぎる。)


「嬢ちゃん!」


「斉藤警部……!」


廊下の奥から響いて来た声に樹が勢いよく反応する。


駆け寄ろうとしてよろめく樹を支えようと警部もまた、樹に駆け寄る。



声の主は警視庁捜査一課の斉藤順一。

役職は警部で種田の上司であり、彼もまた樹を古くから知る人物――


と初めて対面した斉藤の情報を整理しつつ、観察する。

上手く隠してはいるが脇に拳銃を携帯している。
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