Depend on…
「あたしのせいだ」
樹は確かにそう言った。
それを斉藤は否定したが……
――仮に、
仮に、樹が自分にその封を開けさせようとしていたとしたらどうだろうか。
それを大阪が誤って開けてしまったとしたら……
椎名の眉間にシワが寄る。
「ごめんね。」
おもむろに樹が口を開いた。
「しっかりしなきゃね。」
そう言って笑う顔に力がない。
「それから……話してないこといろいろあって。
出来れば話さずに終わりたかったんだけど……
もう少し整理出来たら話すね。」
「……帰りましょう。送ります。」
樹の言葉には答えず、椎名は歩き出した。
本人は軽く微笑んで見せたつもりのようだが、上手く微笑めていないことには気付いていないようだ。
二人きりで不意に襲われたら樹には勝てないということを椎名は十分承知していた。
まして運転中となれば以っての外だ。
それでも「送る」と言わずにはいられなかったのは、あのまま一人で帰したら、家に帰らないのではという予感がしたからだ。
それにもし、樹を狙う第三者がいるのならば、その正体を突き止めなければならない。
いつからか「仕事」の事を考えるとため息をつくようになっていることも椎名は気付いていないのだった――……