契約婚していた御曹司と離婚する日になりました。だけど、彼は離婚したくないようです。




「一年間だけ、俺の妻になって欲しい」


そう言われて頷いたのは、去年の冬。そうして、私と陸斗さんは契約婚をした。一年経過して、離婚する日になった一月四日。


「離婚したくないんだ」


そう告げられ、私は困っていた。


私達はどちらも親に結婚を急かされていた。私は三十歳で、陸斗さんは三十二歳。そろそろ、と両親や親族からプレッシャーがあり、二人共困り果てていた。陸斗さんは会社の御曹司で、会社の幹部職に就いており、私は受付で働いていた。顔を合わせる事がけっこうあって、食事に誘われた時、契約婚の話を持ち出された。結婚して、一年で離婚すれば、どちらの親も諦めてくれるんじゃないかと、そういう話だった。


だけど、目の前にいる、綺麗な顔だけれど、可愛らしさもあるこの人は、「離婚したくない」と言っているのだ。どうしよう、と、頭の中でいろいろ考えているけど、答えが何も出てこない。



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