契約婚していた御曹司と離婚する日になりました。だけど、彼は離婚したくないようです。
思えば一年、いろいろあった。私と陸斗さんの仲は悪くなく、むしろ仲良くなった。二人共海外文学が好きだと分かり、それですぐ打ち解けてしまったのだ。
陸斗さんは英語もフランス語もドイツ語もできる人で、翻訳されたものしか読めない私に、原書との違いを詳しく教えてくれた。そんなことが日々楽しかった。
タワーマンションの一室で二人で過ごし、春には旅行にまで行った。京都で食べ歩いて、旅館にも行ったけど、別々の部屋に寝泊まりした。夏には海を見て、海鮮料理を堪能して、秋には読書の季節だと、たくさんの古書を読んで、冬にはクリスマスのディナーまで食べて……。
だけど私は、陸斗さんをお友達としてしか見ていなかった。契約婚はしたものの、恋愛感情を抱くようなことも無かったのだ。
陸斗さんの方は……違ったようだけれど。