契約婚していた御曹司と離婚する日になりました。だけど、彼は離婚したくないようです。



でも、そうだな。彼と居て心地よいとは感じる。不快に思ったことなんて、一度もなかった。


「少し……考えさせてください」


私は陸斗さんに頭を下げた。こうして、契約婚は延長されることになったのだった。



***



仕事が始まって、忙しい日々を過ごしていた。二月になっても私たちの生活は変わらない。相変わらず楽しくやってる。でも、たまに陸斗さんは、私の手に、自分の手を重ねるようになった。そうして見つめられると、なんだかドキドキしてしまうことが多くなった。


「花蓮さんは、こうしてるとどんな気持ちになる?」


リビングのソファで、一緒に映画を見ていた時に、そう言われた。手は重ねられていて、私は正直に、


「恥ずかしいです……」


そう答えた。そんな私に、陸斗さんは微笑する。


「なんだか、いいな、花蓮さんは。初々しいというか……」


「そんなに、男性と付き合って来なかったから……なのかな?」


「そうか……。そういうところも、可愛いと思う」


私の顔がかあっと熱くなる。一年間、こんなふうに恋愛の側面なんて出さなかったのに……。急にアプローチされて、戸惑いを隠せない。




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