拾いました。
さっきまでとは違って、低い声で耳に響く音。

どくん


「……っわ、かんな……い!」


どくん


「……そうなんだ」


不服そうな顔で私を見つめ、呟いた。私はというと、もう緋刻の顔を直視できず逸らしている。この心臓はいったいどうしてしまったのか。さっきから高鳴りっぱなしで、うるさい


「華留……こっち、向いて」


「……や」


ぐい

そして、無理矢理顔を合わせたかと思うと。


「じゃあ、答えてくれなかったから……俺の好きなことさせてくれる……?」

「え、なにそ、……んっ」


なにそれ、と言うことばを紡ぎ出すことは出来ず。だが、自分が何をされているのか、理解するのに時間は掛かからなかった。どんなに押しても離れることはなく、むしろ強まる。

ちゅ


「ん……っ」


やだ、何か変な声が。


「緋刻! やめっ「だめ。俺が満足するまで待って……ね」


そう言って、また塞ぐ


「……っふぅ」


「華留、可愛い……」


ちゅ

身体の力が抜けて、ぼうっとする。

ちゅ、ちゅ


「ん……」


触れては離れるの、繰り返し。


「は……、ぁ」


それだけ。それだけなのに。

ちゅ

身体が、火照っていく。
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